永代普請|坪井利三郎商店 社寺営繕事業部
鐘楼堂の移築と山門の修復
掲載日 2017.09.04
掲載日 2017.09.04
浄福寺の鐘楼堂は、伊勢湾台風によって損壊し、仮堂のまま50年以上の歳月が経過していました。しかし近年、廃寺となる別の寺から鐘楼堂の寄進を受けることとなり、移築が決まりました。図面もなく、欠けたパーツも多いなかでの工事となりました。
一方の山門は、築後150年が経過して屋根を支える梁が折れており、倒壊が心配されていました。前の道路が小学校の通学路になっていることから、修復を望む声も多く、鐘楼堂の移築に続いて着工が決まりました。
最初にご相談があったのは、2009(平成21)年。鐘楼堂、山門とも、そこから幾度もの調査を経て、施工に至りました。
鐘楼堂は、すでに取り壊され、部材が積み上げられた状態だったため、それらの部材を一つひとつ調べながら、完成形をイメージしました。写真もなく、資料もないところからのスタートでした。
山門は、調査によって屋根重木が大議場に配置された「唐様」様式で造られていることがわかりました。修復は、150年前の宮大工の意図を予測するところから始まりました。建物に手を入れることによって、造った時の大工の思いが伝わってくるのも、修復の醍醐味です。
鐘楼堂は、現存するパーツを基に、当初の姿の検討を重ね復元図面を描きました。この時、もっとも気を使ったのが使用する木材の選定で、古い木材から推測して新しい材を決め、100年、200年後も凛とそこに建つ建物を目指しました。また、重い梵鐘を吊り下げ地震への備えに対して制震ダンパー取り付けという付加価値も加えました。
山門は小屋組をすべて解体し、新しい部材に取替え、扇垂木の力強い屋根の線が復元できました。鐘楼堂と同様に、制震ダンパーを設置し、地震で倒れない山門として復元することに力を注ぎました。
施工前は、鐘楼堂と山門をほぼ同時に修復することによる費用の問題から、さまざまな声が上がりました。
しかし、新たな鐘楼堂が建ち、心配のもとであった山門が美しい姿で復元されたことで、心配されていた費用面の問題も解決し、施工後は「修復して良かった」というご意見を多数いただきました。
その後、境内のトイレの新築や駐車場の舗装なども実施しています。